セキュリティ

生成AIからの情報漏えい対策|ChatGPTに入れていい情報・ダメな情報と社内ルール

公開:2026.10.22 / AI導入参謀 編集部
生成AIからの情報漏えい対策|ChatGPTに入れていい情報・ダメな情報と社内ルール

「社員がChatGPTに顧客の情報を貼り付けていないか心配」「無料版を使わせて大丈夫か分からない」——生成AIを使い始めた会社の多くが、ここで立ち止まります。生成AIからの情報漏えいは、特別な攻撃よりもふだんの使い方の中で起きやすいのが特徴です。この記事では、漏えいが起きる場所から、入れていい情報の線引き、設定、社内ルール、万一の報告までを順に整理します。

⏱ 忙しい人向け 3行まとめ

  • 生成AIからの情報漏えいは「入力」「共有リンク」「連携アプリ」「シャドーAI(会社が認めていないAIの利用)」の4か所で起きやすい
  • 対策の土台は「入れていい情報の線引き」と「学習に使わない設定・法人プラン」。法人プランにしても、共有リンクと連携アプリの管理は別に必要
  • シャドーAIは禁止だけでは減りにくい。会社が認めたAIを用意し、申請の窓口と報告のルールをセットで決めるのが現実的

生成AIの情報漏えいはどこで起きるか——入力・共有リンク・連携アプリ・シャドーAI

生成AIの情報漏えいは、主に4つの場所で起きやすいと整理できます。IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれ、3位に入りました。(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」および同 解説書[組織編]、2026年10月22日確認)

⌨️ 1. 入力

顧客名簿や社外秘の資料をそのまま貼り付ける。個人向けの設定のままだと、入力内容が学習に使われる場合がある

🔗 2. 共有リンク

会話の共有リンクを社外に送る・転送される。リンクを知っていれば誰でも見られる種類のものがある

🧩 3. 連携アプリ

メールやファイル共有とAIをつなぐ。権限の設定しだいで、見せたくない情報までAIが扱える

👤 4. シャドーAI

会社が認めていないAIを、社員が個人のアカウントやスマホで仕事に使う。会社から実態が見えない

特に気をつけたいのがシャドーAIです。IPAの解説書は、個人で使っているAIサービスに持ち出し禁止の業務データを入力すれば情報漏えいにつながると説明し、海外のAI企業の調査として、業務で生成AIにデータを貼り付けて入力している利用者が77%、そのうち82%が組織に管理されていないアカウントからだったという結果を紹介しています。(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編]」2026年3月、2026年10月22日確認)

生成AIに入れていい情報・ダメな情報

生成AIに入れていい情報かどうかは、「漏れたら誰かが困るか」と「使っているプラン・設定」の組み合わせで決めるのが目安です。次の表を社内基準のたたき台にできます。

情報の種類例扱いの目安
公開済みの情報自社サイトの文章、公開済みのチラシ○ どのプランでも可
社内の一般的な情報会議メモ、業務手順、社内向けのお知らせ△ 会社が認めた法人プランか、学習をオフにした設定で
社外秘の経営情報決算前の数字、原価、新商品の計画△ 会社が認めた法人プランで、必要な部分だけ
個人情報顧客・従業員の氏名、連絡先、購入履歴× 原則入れない。「Aさん」などに置き換える
取引先から預かった情報秘密保持契約のある図面・資料× 原則入れない。契約で認められているかを先に確認
特に慎重に扱う情報病歴などの健康情報、マイナンバー、パスワード、口座番号× 入れない

個人情報保護委員会は、事業者が個人情報を含む指示文(プロンプト)を入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認すること、本人の同意なく入力した個人データが応答の出力以外の目的で扱われると法律に違反する可能性があるため、提供事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確認することを求めています。(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」令和5年6月2日、2026年10月22日確認)

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日公表)も、AIを使う事業者の取り組みとして個人情報や機密情報を不適切に入力しないよう注意を払うことを挙げています。(出典:同ガイドライン 第5部「AI利用者に関する事項」、2026年10月22日確認)

表の「×」は「AIを使うな」ではなく、「その情報を外して使う」という意味です。お詫びメールなら、氏名を「A様」に置き換えて下書きし、最後に人が差し込めば済みます。

生成AIの情報漏えいを防ぐ設定——学習に使わない設定と法人プラン

設定で最初に確かめたいのは、入力した内容がモデルの学習に使われるかどうかです。主なサービスの公式ヘルプで確認できた内容は次のとおりです。条件は変わるため、契約前に各社の最新のページで確認してください。

サービス個人向け(無料・個人の有料版)法人向けプラン
ChatGPT「設定」→「データコントロール」の「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、新しい会話は学習に使われないBusiness・Enterpriseなどは初期設定で学習に使わない
Claudeプライバシー設定の「Model Improvement」で学習への利用を選ぶ。Incognitoチャットは学習に使われないTeam・Enterpriseなどは初期設定で入力・出力を学習に使わない
Gemini「アクティビティの保存」をオフにすると学習に使われない(72時間は保存)。オンだと人が会話の一部を確認することがあるGoogle Workspaceは許可なく顧客データを学習に使わず、人によるレビューもない
Microsoft Copilot(今回は確認対象外)法人向けは、プロンプト・応答と社内データ(Microsoft Graph経由)を基盤モデルの学習に使わない

(出典:OpenAI ヘルプセンター「ChatGPT のデータ管理」、Anthropic プライバシーセンター「Is my data used for model training?」(個人向け・法人向け)、Google「Gemini アプリのプライバシー ハブ」「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」、Microsoft Learn「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」、いずれも2026年10月22日確認)

⚠️

「いいね」ボタンにも注意

学習への利用をオフにしていても、回答への評価(いいね・よくないね)などのフィードバックを送ると、その会話が学習に使われることがあります。ChatGPTとClaudeのヘルプにそう書かれています(Claudeの法人向けは管理者が送信をオフにできます)。「業務データを含む会話では評価ボタンを押さない」と決めておくと安心です。

料金と学習への利用の有無は生成AIの料金・プラン比較に、選び方はChatGPT法人プランの料金と選び方と生成AIの法人向けの選び方にまとめています。

共有リンクは「知っている人なら見られる」ものがある

ChatGPTのヘルプでは、個人アカウントで作った共有リンクはリンクを知っている人なら誰でも閲覧でき、転送もできると説明されています。有効期限はなく、不要なものは「設定」→「データコントロール」の「共有リンク」から削除します。BusinessやEnterpriseで作ったリンクは同じワークスペースのメンバーだけが開け、Enterpriseでは管理者が共有をオフにできます(Businessには全体で無効にする同等の機能はないとされています)。(出典:OpenAI ヘルプセンター「ChatGPT での会話とスケジュール済みタスクの共有」、2026年10月22日確認)

連携アプリは「つなぐ前」に範囲を決める

ChatGPTのヘルプでは、連携アプリから取得した情報は、Business・Enterpriseなどでは初期設定で学習に使わない一方、個人向けプランでは「すべての人のためにモデルを改善する」がオンだと学習に使われることがあるとされています。(出典:OpenAI ヘルプセンター「ChatGPT の接続済みアプリ」、2026年10月22日確認)

また、Microsoftの法人向けCopilotは、利用者が閲覧権限を持つデータだけを表示する仕組みです。つまり共有フォルダが「全員に公開」のままなら、AI経由でも全員が見られます。つなぐ前に、給与・人事などのフォルダの権限を見直すのが目安です。(出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」、2026年10月22日確認)

生成AIの社内ルールに足す5項目

生成AIの社内ルールがすでにある会社は、情報漏えいの観点で次の5項目を足すのが目安です。ルールの作り方とテンプレートは生成AIの社内ルール・ガイドラインの作り方にあり、その「入力禁止情報」「学習利用設定の確認」に運用の細部を付け足すイメージです。

  1. 情報の区分表を別紙にする:上の表を自社の言葉に直し、迷ったときの相談先も書く
  2. 共有リンクの扱い:社外への共有リンクの送付は原則しない。月に1回、一覧を見て不要なものを削除する
  3. 連携アプリの承認:つなぐのは会社が認めたアプリだけ。読ませるフォルダの範囲と権限を先に確認する
  4. 個人アカウントと評価ボタン:業務の情報は個人アカウントで扱わない。業務データを含む会話では評価ボタンを押さない
  5. 「入れてしまった」ときの報告:報告先を決め、報告した人を責めないと明記する

IPAの「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」(2026年7月)も、社内のAI利用ガイドラインに入力できる情報の分類と入力禁止情報、判断に迷うときの相談窓口、情報漏えいを見つけたときの連絡先と初動の手順などを入れる例を示しています。社員への伝え方は社員のAI教育はどう進めるかも参考にしてください。(出典:IPA 産業サイバーセキュリティセンター 中核人材育成プログラム「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」2026年7月、2026年10月22日確認)

シャドーAIは禁止せずに管理する

シャドーAIへの対策は、全面禁止よりも「会社が認めたAIを用意し、それ以外は使わないルールにする」のが現実的です。IPAの手引書は、シャドーAIの多くは悪意ではなく業務上の必要から生まれ、禁止を先に打ち出すだけでは申告されない利用が増えて実態が見えにくくなるおそれがあると指摘しています。手引書が挙げる対策は次の3つです。

1. 会社が認めたAIを用意する:「使いたいのに公式な手段がない」状態をなくす。漏えいの心配が大きい部署から優先する。
2. ルールと申請の窓口を作る:認めたAIの一覧と、新しいツールの申請先を明文化する。
3. 技術的な見張りは小さく始める:検知・遮断の製品は費用や手間が増えやすく、明らかに危ないサービスの遮断から始めるのが現実的とされる。

手引書は、個人のスマホなど会社のネットワークを通らない端末からの利用は技術的に止めにくいとも書いています。だからこそ「隠れて使うより、申請した方が楽」と感じてもらえる窓口づくりが効いてきます。(出典:同手引書、2026年10月22日確認)

生成AIから情報漏えいが起きたら——初動と個人情報保護委員会への報告

個人情報を入力してしまったなどと気づいたら、まず広がりを止め、事実を記録するのが先です。

  1. 気づいた人が、決めておいた報告先にすぐ連絡する
  2. 何の情報が・何件・誰に見られる状態だったかを、画面の保存も含めて記録する
  3. 該当する共有リンクや会話を削除し、必要なら連携アプリの接続を外す
  4. 個人データが関わる場合は、個人情報保護委員会への報告の対象かを確認する

委員会は、要配慮個人情報(病歴など)を含むもの、財産的被害のおそれがあるもの、不正の目的によるおそれがあるもの、本人が1,000人を超えるものの漏えい等(おそれを含む)を報告の対象としています。期限は次のとおりです。

3〜5日以内
速報の目安(発覚した日から)
30日以内
確報(発覚した日から)
60日以内
確報(不正の目的によるおそれがある場合)

報告はオンラインの「漏えい等報告フォーム」から行います。業種によっては、権限を委任された省庁へ報告する場合もあります。(出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」、2026年10月22日確認)

⚠️

判断に迷ったら早めに確認を

生成AIへの入力が報告の対象に当たるかは、情報の種類や件数などで判断が分かれる可能性があります。最新の内容は委員会のページで確認し、迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。初動の全体像は中小企業のセキュリティ対策ガイドで整理しています。

セキュリティ対策の費用を抑えるヒント

中小企業のセキュリティ対策には、監視や相談などをまとめたサービスを補助の対象にする制度があります。詳しくはセキュリティ対策の補助金をご覧ください。制度は公募回・年度で変わるため、最新の内容は公式サイトや専門家で確認してください。ランサムウェアへの備えはランサムウェア対策は中小企業もVPNからで整理しています。

つまずきポイント

「法人プランにしたから安心」で止まってしまう

法人プランにすると学習に使われる心配はかなり減ります。ただ、共有リンクの送り先、連携アプリが読める範囲、個人アカウントでの利用は、プランを変えただけでは変わりません。切り替え時に、共有リンクと連携アプリの一覧を一度見直しておくと安心です。

「入れてしまった」と言い出しにくい

罰則を強く書いたルールでは、うっかり入力した社員が黙ってしまい、会社が気づくのが遅れがちです。報告に期限がある以上、早く知ることが会社を守ります。「報告した人は責めない」と書き、実際にそう対応することまでが対策の一部です。

よくある質問

Q. 無料版でも「学習に使わない設定」にすれば、業務で使ってよいですか?

A. 学習への利用をオフにすれば、入力内容が学習に使われる心配は減ります。ただし個人のアカウントでは、会社が利用状況や共有リンクを把握・管理できません。業務で日常的に使うなら、会社が管理できる法人プランを前提にするのが現実的です。

Q. 法人プランなら、顧客の個人情報を入れても問題ありませんか?

A. 学習に使われないことと、個人情報を入れてよいことは別の話です。個人情報保護委員会は、個人情報を入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。まず氏名などを置き換えて使えないかを考え、迷うときは専門家に相談してください。

Q. 社員が個人のスマホでChatGPTを使っているのを止められますか?

A. 個人のスマホからの利用は、技術的に止めにくいとIPAの手引書も指摘しています。現実的なのは、会社が認めたAIを用意し、「業務の情報は会社のアカウントでだけ扱う」と決めて伝えることです。