中小企業庁が令和8年度版 税制パンフレットを公開|AI・システム投資で使える税制と中小企業にとっての意味

中小企業庁は2026年9月16日、令和8年度版の「中小企業税制パンフレット」をミラサポplusに掲載しました。AIツールやシステムの導入というと補助金に目が行きがちですが、同じ投資に対して税制で負担を軽くできる場面もあります。今回の版で押さえておきたいポイントを、中小企業の目線で整理します。
⏱ 忙しい人向け 3行まとめ
- 事実:中小企業庁が令和8年度版の税制パンフレット(全76ページ)を公開。令和8年8月現在の税法等にもとづく内容
- 意味:ソフトウェアも対象になる税制が複数あり、少額減価償却資産の特例は40万円未満に拡充。AI・システム投資の自己負担を下げる選択肢が補助金以外にもあります
- アクション:今期に予定しているシステム投資の金額と時期を書き出し、顧問税理士に「使える税制があるか」を一度確認する
発表の事実
今回掲載されたのは、中小企業向けの税制措置をまとめた冊子の令和8年度版です。ミラサポplusで確認できた内容は次のとおりです。
- 掲載日:2026年9月16日、ミラサポplus(経済産業省 中小企業庁)のお知らせに掲載
- 内容:法人税率の軽減、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、少額減価償却資産の特例、賃上げ促進税制、事業承継税制など全26項目を解説
- 基準時点:パンフレットには「令和8年8月現在の税法等の規定に基づいて作成」と記載
- 注記:「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」および「カーボンニュートラル投資促進税制」について、令和8年度税制改正の内容は後日公表と記載されています
このうち、AIツール・業務システムの導入に関わりやすいのは次の3つです。いずれも金額・要件はパンフレット記載のもので、適用には個別の判断が必要です。
| 制度 | 措置の内容 | ソフトウェアの扱い | 期限 |
|---|---|---|---|
| 中小企業経営強化税制 | 即時償却(特別償却)または取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超で一定の法人は7%)を選択適用 | 対象。取得価額70万円以上。A類型では「情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの」が要件 | 令和9年3月31日までに取得・事業供用 |
| 中小企業投資促進税制 | 取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除を選択適用(税額控除は資本金の額等が3,000万円超で一定の法人は対象外) | 対象。一のソフトウェアの取得価額が70万円以上(年度内の合計額が70万円以上のものを含む) | 令和9年3月31日までに取得・事業供用 |
| 少額減価償却資産の特例 | 40万円未満の減価償却資産を、合計300万円までを限度に取得時に全額損金算入 | ソフトウェアも減価償却資産として対象になり得る | 令和10年度末(2029年3月31日)まで |
少額減価償却資産の特例については、経済産業省の資料(令和8年5月作成)に、令和8年度税制改正を踏まえて取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられたこと、対象は従業員数400名以下の中小企業者等であること、年間の限度額は合計300万円であることが記載されています。
制度は公募回・年度で変わります
税制の要件・率・期限は改正で変わります。本記事はパンフレット記載時点の内容をそのまま引用したものです。適用できるかどうかの判断は、必ず顧問税理士または所轄の税務署に確認してください。
中小企業にとっての意味
中小企業にとっての意味は、「AI・システム投資の自己負担を下げる手段は、補助金だけではない」ということです。
1つ目は、補助金に落ちても打ち手が残る点です。補助金は公募期間があり、採択されるとも限りません。一方、税制は要件を満たせば期間内に投資した分に適用されます。「補助金が取れなければ投資しない」ではなく、「税制も含めて実質いくらになるか」で考えると、判断の幅が広がります。
2つ目は、AIツールの多くは「税制の対象になりにくい買い方」をしている点です。経営強化税制・投資促進税制でソフトウェアが対象になるのは取得価額70万円以上です。月額課金のクラウドサービス利用料は、一般に資産計上ではなく経費として扱われることが多く、この2つの税制の話にはなりにくい領域です。自社専用のシステムを作る、パッケージを買うといった投資の形をとる場合に、税制の検討対象に入ってきます。
3つ目は、40万円未満への拡充が効く場面があることです。業務用のソフトウェアやPC・周辺機器は、30万円台の価格帯が少なくありません。従来は資産計上して数年かけて償却していたものが、40万円未満であれば取得時に全額損金算入できる範囲に入ります。AI導入と合わせて端末を入れ替えるようなケースでは、経理の手間も含めて影響が出てくるとみられます。
ありがちなつまずき:「設備を買ってから相談する」
中小企業経営強化税制は、原則として設備の取得前に経営力向上計画の認定を受ける必要があります(A・B類型では設備取得日から60日以内に計画が受理されれば適用できる例外もあります)。導入を決めてから相談するのではなく、見積りが出た段階で税理士に一声かけておくと、選択肢を残したまま進められます。
今やるべきこと
今やるべきことは、税制の中身を覚えることではなく、「相談できる材料をそろえる」ことです。
- 今期に予定しているシステム・設備投資を書き出す:何を・いくらで・いつ導入する予定かの3つだけで十分です。これが税理士との相談材料になります
- 買い方(買い切りか月額か)を確認する:月額のクラウド利用か、資産として計上する導入かで、検討できる制度が変わります
- パンフレットの該当ページだけ目を通す:全76ページですが、目次から「6.中小企業経営強化税制」「7.中小企業投資促進税制」「8.少額減価償却資産の特例」の3つを見れば、自社に関係しそうかの当たりはつきます
- 補助金と税制の両方で見積もる:同じ投資でも、補助金・税制のどちらを使うかで手続きも時期も変わります。判断は専門家と一緒に行ってください
※本記事は2026年9月20日時点の公開情報にもとづきます。税制の要件・率・期限は改正により変わります。最新は公式資料および税理士・所轄の税務署で必ず確認してください。
出典
本記事の事実部分は、次の一次情報にもとづいています。
- ミラサポplus(経済産業省 中小企業庁)「令和8年度版の税制パンフレットを掲載」(2026年9月16日)
- 中小企業庁「税制」
- 経済産業省「少額減価償却資産の特例を拡充しました」(令和8年5月作成・PDF)
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