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クレーム対応で現場が疲弊する|一次対応の型とAIの使いどころ

公開:2026.10.08 / AI導入参謀 編集部
クレーム対応で現場が疲弊する|一次対応の型とAIの使いどころ

「クレームの電話が鳴るたびに空気が重くなる」「対応した社員が翌日つらそうにしている」「結局いつも社長かベテランが出ていく」——。人が少ない会社ほど、クレーム対応の負担は特定の人に集まりがちです。けれど、疲れの正体をたどっていくと、クレームの数そのものより「どう対応するかが決まっていないこと」が負担を大きくしているケースが少なくありません。この記事では、一次対応の型をつくり、AIで準備と記録の手間を減らす進め方を一緒に整理していきます。

⏱ 忙しい人向け 3行まとめ

  • 現場が疲れる原因は「型がない」「一人で抱える」「記録が残らない」の3つに分けて考えると打ち手が見えやすい
  • まず一次対応の型(聞く順番・言ってよいこと・上に渡す基準)を1枚にまとめる。AIは記録の要約、返信文の下書き、よくある不満の分析に向いている
  • 2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になった。方針・相談窓口・事後対応の3点を、型づくりとあわせて整えるのが現実的

クレーム対応で現場が疲弊する3つの原因

クレーム対応の疲れは、「型がない」「一人で抱える」「記録が残らない」の3つが重なって大きくなるのが典型的なパターンです。どれが一番効いているかで、最初に手をつける場所が変わります。

1つめの「型がない」は、どこまで謝ってよいか、何を約束してよいかが決まっていない状態です。その場で毎回考えることになり、判断の重さがそのまま疲れになります。返金や交換を「言ってしまった」あとで社内でもめる、という二重の負担も起きやすくなります。

2つめの「一人で抱える」は、電話を取った人が最後まで対応する暗黙のルールがある状態です。話が長引いても代わってもらえず、終わったあとも誰にも話せないまま次の仕事に戻ることになります。少人数の会社では、これが離職のきっかけになることもあります。

3つめの「記録が残らない」は、対応の経緯が担当者の頭の中にしかない状態です。同じお客様から再度連絡があったとき、別の人が一から話を聞き直すことになり、相手の不満も現場の負担も膨らみがちです。

疲れやすい職場

謝り方や約束の範囲は担当者の判断任せ/電話を取った人が最後まで対応/経緯は担当者の記憶だけ/長時間の電話でも切り上げる基準がない

疲れにくい職場

聞く順番と言ってよいことが1枚にまとまっている/一定の条件で上の人に代わる/経緯は共有の記録に残る/「ここから先は対応しない」線が決まっている

自社がどちらに近いかを、現場のメンバーに聞いてみるのが出発点です。「最近つらかったクレーム対応」を3つほど挙げてもらい、上の3つの原因のどれに当たるかを分けてみると、優先順位がつけやすくなります。

2026年10月からカスハラ対策が会社の義務に

2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策がすべての事業主の義務になりました。中小企業も対象です。クレーム対応の型づくりは、この義務への備えと重なる部分が多くあります。

厚生労働省の資料では、カスハラは「顧客などの言動であること」「社会通念上許容される範囲を超えていること」「そのために働く人の就業環境が害されること」の3つを満たすものとされています。お客様からの苦情がすべてカスハラになるわけではない点は押さえておきたいところです。正当な苦情には誠実に対応し、度を越えた言動からは社員を守る、という両方の線引きが求められます。

指針で示された主な措置中小企業での具体例
方針の明確化と周知「度を越えた言動には組織として対応し、社員を守る」方針を決め、社内に伝える
相談に応じる体制困ったときに相談できる人(社長・管理者など)を決め、相談しやすい形にする
起きたあとの対応事実を確認し、対応した社員の安全確保や心身のケアを行う。再発を防ぐ手を打つ
あわせて求められること相談した人のプライバシーを守る。相談したことを理由に不利益な扱いをしない

具体的な内容は、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)と「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」にまとめられています。法令の解釈や自社の規程づくりは、厚生労働省の資料や社会保険労務士・弁護士などの専門家で必ず確認してください。

一次対応の「型」をつくる5ステップ

一次対応の型は、集める→分ける→決める→書く→試すの5ステップでつくるのが基本形です。最初から全部のケースを網羅しようとせず、よくある3〜5パターンから始めると進めやすくなります。

  1. STEP1:過去のクレームを集める

    ここ半年ほどのクレームを、覚えている範囲で書き出します。メールや問い合わせフォームの履歴、日報のメモなども材料になります。「いつ・何について・どう終わったか」の3点が分かれば十分です。

  2. STEP2:種類ごとに分ける

    「商品・サービスの不具合」「説明不足・行き違い」「対応への不満」「度を越えた要求」など、4〜6種類に分けます。件数が多い種類と、1件あたりの負担が重い種類が見えてきます。

  3. STEP3:種類ごとに「言ってよいこと」と「上に渡す基準」を決める

    担当者がその場で約束してよい範囲(お詫び、事実確認、折り返しの約束など)と、上の人に代わる条件(返金・補償の話が出た、30分を超えた、大声や威圧が続いたなど)を決めます。「代わる基準」が決まっているだけで、担当者の心理的な負担は軽くなりやすいです。

  4. STEP4:1枚の対応シートにまとめる

    聞く順番(名前・連絡先・何が起きたか・いつ・どうしてほしいか)、使ってよい言い回し、上に渡す基準、記録の残し方を1枚にまとめます。電話の横に置ける量が目安です。

  5. STEP5:ロールプレイで試して直す

    社内で客役・対応役に分かれて、よくあるパターンを5分ほど試します。言いにくかった言葉、聞き漏れた項目をシートに書き足します。月1回、実際のクレームを振り返って直すと、型が現場に合っていきます。

ポイントは、STEP3の「上に渡す基準」を具体的な条件で書くことです。「難しいと思ったら」のような曖昧な書き方だと、担当者が遠慮して抱え込みやすくなります。時間・話題・言動のように、誰が見ても判断できる条件にしておくのが現実的です。

クレーム対応でAIが手伝えること・任せないほうがいいこと

AIが力を発揮しやすいのは、対応の「前」と「後」の作業です。お客様と向き合う一次対応そのものは人が担い、準備・記録・振り返りの手間をAIで減らすのが基本形です。

場面AIが手伝えること人がやること
対応シートづくり過去のクレームの書き出しから、種類分けと対応シートの下書きを作る自社の方針に合っているか確認し、言ってよい範囲を決める
記録通話の録音やメモから、経緯の要約と次にやることを整理する要約が事実と合っているか確認し、共有の記録に残す
返信文お詫びや経緯説明のメール・手紙の下書きを作る。言い回しを落ち着いたトーンに整える事実関係と約束の範囲を確認してから送る
振り返り記録をまとめて、多い不満や時期ごとの傾向を整理する原因になっている商品・説明・手順を直す
問い合わせの予防よくある質問と回答の案を作り、Webサイトやチャットボットで案内する回答の中身を確認し、古くなった情報を更新する

一方で、AIに任せないほうがいい場面もあります。

AIに任せやすい

記録の要約/返信文の下書きとトーン調整/よくある不満の集計と分析/FAQの案づくり/対応シートや研修用シナリオの下書き

人が担ったほうがいい

怒っているお客様への直接の応対/返金・補償など約束を伴う判断/カスハラに当たるかどうかの判断/対応した社員のケア

💡

ここがポイント

クレームの記録には、お客様の名前や連絡先、注文内容などの個人情報が含まれます。AIに入力する前に、会社として契約した法人向けプランを使う・個人を特定できる部分は伏せるといったルールを決めておくのが安心です。ルールの作り方は生成AIの社内ルールの作り方で整理しています。

クレームにつながる問い合わせそのものを減らしたい場合は、よくある質問をWebサイトやチャットボットで先回りして案内する方法もあります。詳しくは問い合わせ対応を自動化するで、電話の一次受けの負担を減らす選択肢は電話番のせいで仕事が進まないで紹介しています。

始める前のチェックリスト

型づくりとAIの活用を始める前に、次の項目を確認しておくと進めやすくなります。

① 集めて分ける

過去のクレームを種類分け

② 型を決める

言ってよいこと・代わる基準

③ 記録を一か所に

AIで要約して共有

④ 月1回振り返る

原因を直して件数を減らす

つまずきポイント

型が「マニュアルの棚」にしまわれてしまう

立派な対応マニュアルを作っても、電話が鳴った瞬間に開ける場所になければ使われにくくなります。電話の横に置ける1枚にまとめ、細かいケースは共有フォルダに分けて置くと、現場で使われやすくなります。マニュアルを更新し続ける方法は業務マニュアルをAIで作り、更新し続ける仕組みが参考になります。

AIが整えた文章をそのまま送ってしまう

AIの下書きは丁寧に見える分、事実と違う説明や、約束していない対応が紛れ込んでいても気づきにくくなります。送る前に「事実」「約束の範囲」「相手の名前と日付」の3点を確認することを、対応シートに書いておくのが現実的です。

補助金で安くするヒント

問い合わせ管理のツールやチャットボット、電話の自動応答などの導入には、補助金が使える場合があります。たとえば業務効率化のITツールは「デジタル化・AI導入補助金」が候補になることがあります。ただし、対象になるツールや経費、申請の時期は制度ごとに細かく決まっており、制度は公募回・年度で変わります。最新は必ず公式サイトや専門家で確認してください。全体像はAI導入に使える補助金・助成金 完全ガイドで、デジタル化・AI導入補助金の使い方はデジタル化・AI導入補助金とはで整理しています。

よくある質問

Q. 社員が少なく、「上の人に代わる」相手がいません。どうすればいいですか?

A. 代わる相手がいない場合は、「その場で結論を出さず、確認して折り返す」ことを型にしておく方法があります。一度電話を切って時間を置くだけでも、担当者の負担は軽くなりやすいです。社長が不在がちな会社では、折り返しの期限(当日中、翌営業日までなど)を決めておくと、お客様にも説明しやすくなります。

Q. 怒っているお客様の電話を、AIに対応させることはできますか?

A. 現時点では、怒っているお客様への直接の対応は人が担うほうが現実的です。気持ちをくみ取ったり、約束を伴う判断をしたりする場面では、AIの応答がかえって不満を大きくすることがあります。AIは、用件の聞き取りと記録、担当者への引き継ぎ、対応後の返信文の下書きなどで使うのが向いています。

Q. カスハラ対策の義務化で、小さな会社は何から始めればいいですか?

A. まず「度を越えた言動には会社として対応し、社員を守る」という方針を決めて社内に伝え、困ったときの相談先を決めることから始めるのが現実的です。そのうえで、起きたときの対応の流れを対応シートに書き足していきます。具体的な内容は厚生労働省の指針と企業マニュアルにまとめられているので、あわせて確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談してください。