補助金・助成金

ものづくり補助金でAI・システムは対象になるか|対象経費の考え方

公開:2026.09.12 / AI参謀 編集部
ものづくり補助金でAI・システムは対象になるか|対象経費の考え方

「AIを入れたいが、ものづくり補助金は使えるのだろうか」——設備投資の相談でよく出てくる質問です。結論から言えばAIやシステムへの投資が補助対象になる余地はありますが、「AIツールを買う費用を補助してもらう」という発想のままでは通りにくい制度でもあります。この記事では、対象経費の考え方と、自社の投資がどちら側に立つのかを一緒に整理していきます。

⏱ 忙しい人向け 3行まとめ

  • ものづくり補助金の対象経費には「機械装置・システム構築費」があり、AIを組み込んだシステムの構築費用が入る余地はある
  • ただし審査で見られるのは「AIを買ったか」ではなく「それで何が新しくなるか」。既製ツールを契約するだけの申請は通りにくい傾向
  • 業務効率化が目的ならデジタル化・AI導入補助金や省力化投資補助金のほうが合いやすい。制度は目的で選ぶのが現実的

ものづくり補助金でAIやシステムは対象になるか

対象になり得ます。ものづくり補助金(令和8年度からは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に統合されています)の補助対象経費には「機械装置・システム構築費」という区分があり、ソフトウェアやシステムの購入・制作・構築にかかる費用がここに含まれるとされています。AIそのものを名指しで除外する規定があるわけではありません。

ただし、ここで注意したいのが制度の性格です。この補助金は「革新的な製品・サービスの開発」や「新市場・高付加価値事業への進出」に向けた設備投資を支援するもので、日々の業務を少し楽にするためのIT導入を想定した制度ではありません。同じ「AIを導入する」でも、その位置づけによって評価は大きく変わります。

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ここがポイント

審査で見られているのは「AIを使うかどうか」ではなく、「その投資によって、自社の製品・サービスや事業のあり方がどう変わるか」です。AIは手段であって、申請の主役ではありません。ここを取り違えると、内容の良し悪し以前のところで評価が伸びにくくなります。

なお、補助金の対象要件・補助上限・スケジュールは公募回や年度の制度改定で変わります。この記事は考え方を整理するためのもので、個別の可否は必ず最新の公募要領と事務局で確認してください。

対象経費の区分と、AIやシステムがどこに入るか

まず全体像を押さえます。第1回公募で示されている補助対象経費の区分は次のとおりです。

経費区分AI・システム投資との関わり
機械装置・システム構築費AIを組み込んだ設備、専用に構築したシステム・ソフトウェアの費用。中心になる区分
技術導入費外部から技術・ノウハウの使用権を導入する費用
専門家経費導入にあたって招く専門家への謝金・旅費
外注費開発や試作の一部を外部に委託する費用
クラウドサービス利用費補助事業のために利用するクラウドの利用料
知的財産権等関連経費特許出願などにかかる費用
運搬費/原材料費/広告宣伝・販売促進費枠により取り扱いが異なる
建物費新事業進出枠・グローバル枠で計上できるとされる

実務上おさえておきたいのは、機械装置・システム構築費の計上が事実上の前提になっている点です。革新的新製品・サービス枠では機械装置・システム構築費が必須、新事業進出枠・グローバル枠では機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須とされています。つまり「専門家経費とクラウド利用料だけで申請する」という組み立ては想定されていません。

クラウドサービス利用費についても、専ら補助事業のために利用するものが対象で、自社の他事業と共有する場合は対象外、契約期間が補助事業の実施期間を超える場合は実施期間分のみ、といった整理がされています。汎用のSaaSを全社で使う、という使い方とは前提が異なります。

⚠️

注意

応募時に計上した経費がすべて補助対象として認められるとは限りません。交付申請の段階で個別に精査され、対象外と判断される経費が出ることもあります。自己負担が想定より膨らむ余地は見込んでおくほうが安全です。

対象になりやすいAI投資と、なりにくいAI投資の分かれ目

分かれ目は「その投資が、自社の外に向けて何を生むか」にあります。同じAI活用でも、社内の手間を減らすだけの投資と、製品・サービスの中身や提供できる価値そのものを変える投資では、この制度での評価のされ方が変わってきます。

対象として説明しやすい

AI画像検査装置を導入し、これまで人手では難しかった精度の検査工程を新設して、受注できる製品の幅を広げる。生産設備とAI制御を組み合わせ、従来は対応できなかった小ロット・短納期の受注に応えられるようにする。自社サービスにAIによる解析機能を組み込み、新しい商品として提供する。

この制度では説明しにくい

生成AIの法人プランを全社で契約し、資料作成や議事録の時間を減らす。既製のチャットボットを問い合わせ対応に導入する。会計ソフトのAI機能を使って経理を効率化する。いずれも価値のある投資ですが、「革新的な製品・サービスの開発」という枠組みには乗せにくい部類です。

右側に挙げた投資が悪いわけではまったくありません。むしろ人手不足に効くのは右側のほうです。ただ、制度にはそれぞれ想定している投資の型があり、合わない制度に無理に寄せると計画そのものが不自然になります。右側の投資には、後述するデジタル化・AI導入補助金や省力化投資補助金のほうが素直に合いやすいでしょう。

🔍 検査・品質

AI画像認識で外観検査を自動化し、対応可能な品質水準を引き上げる

⚙️ 生産・制御

設備データをAIで解析し、段取り替えや条件出しの精度を高める

🧠 技能伝承

熟練者の判断をデータ化し、経験の浅い人でも回せる工程に置き換える

📦 新サービス

自社が持つデータをAIで活用し、これまでにない提供価値をつくる

他の補助金との使い分け

「AIを入れたい」という相談で候補に挙がる制度は主に3つです。目的と金額規模で見ると、それぞれの居場所がはっきりします。

 ものづくり補助金
(新事業進出・ものづくり)
デジタル化・AI導入補助金省力化投資補助金
想定する目的新製品・新サービスの開発、新市場への進出既製ITツールの導入による業務のデジタル化人手不足の解消・省力化
投資の規模感数百万〜数千万円数十万〜数百万円数百万〜数千万円
AIの位置づけ製品・工程を変える手段として登録されたITツールとして省力化する設備・システムとして
向きやすい会社設備投資で事業の幅を広げたいまずは社内業務を効率化したい人が足りず現場が回らない
📝

補足

同じ投資に複数の補助金を重ねて充てることは原則できません。一方で、「今期はデジタル化・AI導入補助金で社内の土台を整え、来期にものづくり補助金で設備投資に踏み込む」といった時間差の組み立ては現実的です。制度ごとの締切が違うため、年間の投資計画から逆算して並べてみると整理しやすくなります。

申請を検討するときの手順

いきなり事業計画書を書き始めるより、次の順番で進めるほうが結果的に早く進みやすい傾向があります。

  1. STEP1:投資の目的を一文で書いてみる

    「AIで◯◯を自動化したい」ではなく「◯◯ができるようになって、△△という新しい受注が取れるようにしたい」と書けるかを確認します。書けない場合は、ものづくり補助金以外の制度のほうが合う可能性があります。

  2. STEP2:機械装置・システム構築費で何を計上するか決める

    この区分が計上の前提になります。導入予定のベンダーに構成と見積を出してもらい、どこまでが補助対象になり得るかを整理します。

  3. STEP3:GビズIDプライムを取得する

    電子申請に必要です。発行まで2〜3週間程度かかるとされるため、計画づくりと並行して先に手続きを始めておくと安心です。

  4. STEP4:認定経営革新等支援機関に相談する

    金融機関・商工会議所・税理士などが該当します。要件の確認や計画の詰めを一緒にやってもらえるほか、賃上げ要件のような見落としやすい条件も洗い出せます。

  5. STEP5:効果を数字で組み立てる

    時間・不良率・受注可能量など、自社の実績から根拠のある数字を出します。「大幅に改善」といった表現より、測れる指標のほうが計画として通りやすくなります。

申請前のチェックリスト

つまずきポイント

「AI」という言葉で押し切ろうとしてしまう

計画書にAIという単語を増やしても評価は上がりにくいものです。むしろ、AIで何をどう処理し、その結果どの工程がどれだけ変わるのかが具体的に書かれていない計画は、読み手に伝わりにくくなります。技術の新しさより、「自社にとって何が新しくなるのか」を自分の言葉で書けるかが分かれ目になりやすいところです。

採択後の資金繰りを見落とす

補助金は原則として後払いです。設備やシステムの代金は先に全額支払い、実績報告が済んでから補助分が入金されます。数千万円規模の投資では、この立替期間の資金手当てが実務上の大きな論点になります。金融機関への相談は、採択が決まってからではなく計画段階から始めておくほうが動きやすくなります。

補助金で安くするためのヒント

ものづくり補助金の枠に収まらないAI投資でも、他の制度で自己負担を抑えられる可能性はあります。既製ツールの導入ならデジタル化・AI導入補助金、人手不足の解消を目的とした設備・システムなら省力化投資補助金が候補になります。社員のAI研修に踏み込むなら、人材開発支援助成金のような制度も選択肢に入ります。

いずれの制度も、補助率・上限額・要件・締切は公募回ごとに変わります。「去年はこうだった」という前提のまま準備を進めると、要件の変更を見落とすことがあります。最新の情報は必ず各事務局の公式サイトで確認し、税務や法務に関わる判断は専門家に相談してください。

よくある質問

Q. ChatGPTなどの生成AIの利用料は、ものづくり補助金の対象になりますか?

A. 汎用の生成AIサービスを月額で契約するだけの費用は、対象として認められにくい部類です。ものづくり補助金は「革新的な製品・サービスの開発」や「新市場への進出」に向けた設備投資を支援する制度で、他業務にも使える汎用的なツールの利用料は切り分けが難しいためです。補助事業専用に構築したシステムの一部として組み込む場合など、位置づけ次第で見え方は変わりますので、認定支援機関や事務局に個別に確認することをおすすめします。

Q. ものづくり補助金とデジタル化・AI導入補助金は、どちらを使えばよいですか?

A. 既製のITツールを導入して業務を効率化したいならデジタル化・AI導入補助金、自社の製品・サービスそのものを新しくするための設備・システム投資ならものづくり補助金、という切り分けが目安になります。金額規模も大きく違い、前者は数十万〜数百万円、後者は数千万円クラスの投資を想定した制度です。同じ投資に両方を充てることはできませんので、投資の目的から選ぶことになります。

Q. AIの導入に詳しくないのですが、事業計画は書けますか?

A. AIの技術的な説明を上手に書けるかどうかより、「自社のどの課題を、どう解決し、その結果いくらの効果が出るか」を筋の通った形で書けるかが問われます。技術部分は導入するベンダーから資料を出してもらえることが多く、効果の見積もりは自社の業務時間や不良率などの実績から組み立てられます。認定経営革新等支援機関に相談しながら進めるのが現実的です。

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